<大会レポート>エリート男子:チームプレーでクアルトゥッチが勝利!「新城選手のおかげで勝てた」/エリート女子:現・全日本女王・小林あか里が貫禄の勝利!ほか
チームプレーでクアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)が勝利!「新城選手のおかげで勝てた」
令和7年7月13日、東京2020大会のレガシーイベントとして開催された「THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2025」。エリート男子のレースは全長133.8kmで行われ、日本では珍しいスタートからゴールまで移動するラインレースが沿道13市の協力のもと東京・多摩地域を舞台に繰り広げられた。選手・ファンの期待も大きく、注目度の高い大会となった。
今大会は第2回目にしてUCI(国際自転車競技連合)公認の国際大会となり海外7チーム、国内9チーム、計93選手が出場し、上位入賞者にはUCI年間ランキングに反映されるポイントも付与されることから、ハイレベルな戦いが予想された。
スタートは東京2020と同様に、武蔵野の森公園(調布市・府中市・三鷹市)。数日ぶりの晴天に恵まれた東京では、7時30分のスタート時点で爽やかな気候。多くの観客に見守られる中、選手たちはパレード走行に繰り出した。
コース前半は東京2020大会のルートと重なる区間が多く、府中市のけやき並木通りを通って約10km地点の是政橋でリアルスタート。序盤からアタックの応酬が繰り返され、残り115km地点の尾根幹(南多摩尾根幹線道路)で12名の逃げが決まる。
残り106km、多摩ニュータウン通りの南大沢に設けられたスプリントポイント1では、カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュアランス)がトップ通過。その後、東京2020のルートから完全に離脱し、新コースへ。逃げは一度吸収されるが、残り91kmで再び17名の大規模な逃げが形成される。
レースは多摩大橋、新奥多摩街道、奥多摩街道を経て青梅方面へ。残り82kmで再び吸収されるが、残り78km地点の小荷田交差点付近で14人の新たな逃げが飛び出す。ここには、新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)、沢田時(宇都宮ブリッツェン)、入部正太朗(シマノレーシング)、山本大喜(JCL TEAM UKYO)ら、日本の強豪選手が多く含まれていた。
残り66km地点、青梅駅前での初通過時にはスプリントポイント2が設定され、モハマッド・ヌル(トレンガヌ・サイクリングチーム)がトップ通過。時間の経過とともに気温が上昇し、レースは後半戦へ。
青梅周回コース(4周)に入ると、タイム差は1分近くまで広がる。特に軍畑駅前からの約2kmの登坂区間はレースの山場で、観客も多く詰めかけた。1、2周目の山岳賞(KOM)は沢田が先頭通過。ポイント合計で競われる山岳賞(KOM)を最終的に沢田が獲得した。
1周目途中で逃げから脱落する選手も出るが、メイン集団から加わった選手により新たな14人の先頭集団が形成される。
残り26km、3周目の登坂で新城が集団のペースを上げる。この動きをきっかけに、チームメイトのロレンツォ・クアルトゥッチがアタック。これに唯一反応したのが、ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(VC FUKUOKA)だった。2人の先頭が快調にペースを刻み、後続との差を広げていく。
優勝争いはこの2人に絞られたかに見えたが、残り3kmでクアルトゥッチのチームメイト、キリロ・ツァレンコが10秒差で迫る。クアルトゥッチはツァレンコとの2対1を狙い、プラデスはそれを阻止すべくペースを上げる。駆け引きの末、2人のまま旧青梅街道のラスト500mのストレートに突入。観客の大声援の中、クアルトゥッチがスプリントでプラデスを振り切り、優勝を果たした。
ツァレンコが3位に入り、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニがワン・スリー・フィニッシュ。新城の献身的な働きがチーム勝利を支えた。
7人による後続集団スプリントを制した沢田が4位。山岳賞(KOM)と合わせて日本人最上位の成績を残した。
23歳以下の最上位選手に贈られるヤングライダー賞は、14位のジェラルド・レデスマ・ガルシア(VC FUKUOKA)が獲得。
【コメント】
優勝:ロレンツォ・クアルトゥッチ
「逃げ集団には必ずチームから1人を入れる、ということを終始徹底していました。今日はそこでチームワークを発揮できたと思います。周回コースに入った時点で、先頭集団の人数が多かったので、まずはそこに追いつくことを意識しました。その後、新城選手と話をしました。彼は本当に素晴らしい人で、今日は自分の調子が良いことを伝えると、彼は集団を引っ張る役割を快く引き受けてくれて、僕が勝ちを狙う形にしようと、しっかりコミュニケーションを取ることができました。おかげで勝てたと思っているので、感謝の気持ちでいっぱいです。
逃げが決まってからはプラデス選手とローテーションしながら進んでいましたが、途中でツァレンコ選手の姿が見えてからは、ローテーションをやめて、勝負に向けた展開に切り替えました」
2位:ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ
「今日は序盤からものすごくスピードが速いレースでした。大きな逃げ集団ができたので、少し不安もありましたが、周回コースに入るまでには追いつきたいと思っていたところ、上りでなんとか合流できました。最終的には、優勝した選手と2人でアタックして、いい状況に持ち込めたのですが、残り3kmでソリューションテックのチームメイトが追ってきたことで、少し焦ってしまい、余計なエネルギーを使ってしまいました。
こういう状況は普段ならうまく対応できるのですが、今日は少しミスをしてしまい、2位に終わりました。それでも2位でフィニッシュできたことは嬉しいです。以前、相模原に住んでいましたが、ここを走るのは初めてです。一昨日スペインから戻ってきたばかりだったので、グーグルマップで道を調べてコースをチェックしました」
3位:キリロ・ツァレンコ
「全体を通して良いペースで走れたし、チームとしてもレースをしっかりコントロールできたと思います。序盤にアタックがあった場合には、必ず誰か1人が先頭に入るというのがチームのルールで、今日は大きな集団が形成されたので、1~2人を逃げに送り込むことができ、チームとしていい形で展開できたと思います。
後半については、周回コースでの展開次第で柔軟に対応しようと話していたので、状況に応じてうまく進められたと思います」
4位(日本人最上位)・山岳賞(KOM):沢田 時
「沿道にものすごい数の観客がいて、選手全員が本当に楽しいレースを経験できたと思います。コースは、周回に入ってからかなり厳しい上りがあって、ハードな展開でした。チームの作戦としては、ソリューションテックが最も強力だと考えていたので、もし彼らが入った逃げができてしまったら、おそらく追いつけないだろうと予想していました。
ブリッツェンとしては、逃げに必ず誰か1人、できれば複数名入れることを目標にしていました。本当はもう1人入れたかったのですが、自分が入ることができましたし、メンバーも良かったので、逃げが決まった瞬間から『これは最後まで行けるんじゃないか』という感覚を持ちながら走っていました。」
【リザルト】エリート男子
1位 ロレンツォ・クアルトゥッチ (ITA) ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ 2:46’29”
2位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ (ESP) VC FUKUOKA +3″
3位 キリロ・ツァレンコ (UKR) ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ +24″
4位 沢田時(JPN)宇都宮ブリッツェン +1’12”
■スプリント賞
SP1 カーター・ベトルス(AUS)ルージャイ・インシュアランス
SP2 モハマッド・ヌル(MAS) トレンガヌ・サイクリングチーム
■山岳賞
1位 沢田時(JPN)宇都宮ブリッツェン 11pt
■ヤングライダー賞
ジェラルド・レデスマ・ガルシア(ESP)VC FUKUOKA
現・全日本女王・小林あか里が貫禄の勝利!「目標はツール・ド・フランス・ファム!」
エリート女子のレースは、青梅駅前をスタート・フィニッシュ地点とする周回コース(2周・33.5km)で行われた。7時25分、晴天のもと、17選手がスタートを切った。
1周目の山岳賞(KOM)に向けては、登坂に強い現・全日本チャンピオン・小林あか里(Mtd Ladies)と、東京2020大会代表の金子広美(三重県自転車競技連盟)が早々に後続を引き離す。下り区間では、渡部春雅(Liv Racing Japan)、阿部花梨(イナーメ信濃山形-F)、鈴木友佳子(MIVRO)らが追いつく場面も見られたが、2周目の山岳賞(KOM)で再び小林と金子がアタックし、レースを動かした。
その後、2人はローテーションを重ねてリードを拡大。青梅駅前の最終ストレートでは、小林がスプリントで金子を突き放し、貫禄の勝利を収めた。
3位争いは、前回大会覇者の渡部春雅が阿部花梨とのスプリント勝負を制し、表彰台を確保。
山岳賞(KOM)は、小林と金子が同ポイントとなったが、最終周回(2周目)をトップで通過した小林が獲得。最も積極的な走りを見せた選手に贈られる敢闘賞には金子が選ばれた。
【コメント】
1位:小林あか里(Mtd Ladies)
「1周目の登りで後ろが千切れて、金子選手と2人で逃げようと決めました。その後一度後ろに追いつかれましたが、2周目に再び逃げが決まり、そのまま2人で協調して走りました。金子選手の登りはとても強く、自分も必死でした。でも、最後はマッチスプリントになって、一か八かで先に仕掛けて勝つことができました。
今回はアップダウンが多く、ロードレースらしい楽しいコースでしたし、街中のレースならではの多くの観客に囲まれて、すごく楽しかったです。
最大の目標は『ツール・ド・フランス・ファム』に出場すること。そのために今はオランダを拠点に、よりレベルの高い選手たちと日々競い合いながら成長しています。ワールドチーム入りを目指し、ヨーロッパのレースでしっかりと結果を出していきたいです」
2位:金子広美(三重県自転車競技連盟)
「私は長距離のほうが得意なので、33.5kmという短いレースでは誰かと一緒でなければ逃げられないと思っていました。だから小林選手と逃げる形になったのは想定通りで、力勝負でした。負けてしまいましたが、とても楽しいレースでした。
沿道からはたくさんの声援が聞こえ、オリンピックを思い出すような素晴らしい雰囲気でした。こういったロードレースがもっと増えてほしいです。
来年は、ニセコで開催されるグランフォンド世界選手権でアルカンシェル(世界チャンピオン)を目指します。若い選手たちと切磋琢磨しながら、私もさらに強くなっていきたいと思っています」
3位:渡部春雅(Liv Racing Japan)
「上りが得意ではないので、耐えてスプリントに持ち込もうと考えていました。前の2人がとても強かったので、2周目の後半は3位を狙って走りました。
スタートとフィニッシュ地点は特に多くの観客がいて、とても盛り上がっていました。学生時代に住んでいた地域に近く、東京でのレースは貴重なので、本当に楽しみにしていた大会でした。
これから少しレース間隔が空きますが、冬はシクロクロスのシーズンが始まるので、また頑張りたいです」
【リザルト】エリート女子
- 1位:小林あか里(Mtd Ladies) 0:56’17”
- 2位:金子広美(三重県自転車競技連盟) +1″
- 3位:渡部春雅(Liv Racing Japan) +56″
■ 山岳賞(KOM)
小林あか里(Mtd Ladies)8pt(最終周回首位通過のため)
■ 敢闘賞
金子広美(三重県自転車競技連盟)
パラサイクリング・エキジビション走行にも熱い視線
エリート女子のレース終了後、エリート男子の集団通過直後の熱気が残る青梅駅前では、9時30分よりパラサイクリングのエキジビション走行が開催された。
参加したのは、ハンドサイクルの山本平良選手、島田一彦選手、水野裕樹選手に加え、青梅市立第七中学校自転車競技部の生徒と卒業生。沿道の観客が見守るなか、旧青梅街道のストレートを往復する走行を披露した。
また、スタート・フィニッシュ地点近くの広場では、パラサイクリング体験コーナーも設けられた。二人乗りのタンデムバイクや、手でこぐハンドサイクルの試乗体験が行われ、大人から子どもまで多くの来場者が楽しんでいた。
青梅周回コースを快走!一般サイクリストがコース体験ライドを満喫
エリート男子のレース終了後、一般サイクリストを対象とした「THE ROAD RACE TOKYO CHALLENGE 2025 コース体験ライド」が開催された。
使用されたのは、エリート男子・女子が実際に走行した青梅の周回コース(16.6km)。青梅市天ヶ瀬町の天ヶ瀬グラウンドからスタートするファンライド形式で行われ、スタートからフィニッシュまでの全区間を計測するのではなく、上り2区間のみをタイム計測する特別仕様となった。
コース上やフィニッシュエリアには多くの観客が集まり、一般ライダーにも盛んな声援が送られる場面が見られた。
参加者からは「エリートレースの余韻を楽しみながら走ることができた」「計測区間の上りは走りごたえがあり、達成感があった」などの声が多く寄せられ、観客の応援やコースの雰囲気を楽しむ様子が印象的だった。
※写真:【GRAND CYCLE TOKYO実行委員会】